殆ど図書館での利用だが、角川「俳句」の合評鼎談を読むのが楽しみである。
当期の作品を見たいので9月なら1月号を予約して借りて来ると丁度良い。
平成俳壇も秋の句が並んでいる。
その合評鼎談、平成21年の本井英と今井聖のやり取りが刺激的だった。
「そういうもんなの、写生というのは」と挑発する今井聖に本井英が理路整然と反論する姿が印象的だった。
その本井英の一句、


   ストローを色駆けのぼるソーダ


今井聖は本井英をこう評する(『増殖する俳句歳時記』より)


本井 英

   秋草や妻の形見の犬も老い

俳句といえど自己表現なんだから他者と自己との識別をこころがけていくべきだ云々、僕が口角泡を飛ばして言ったとき聞いていた本井さんがぽつりと言った。「あなたは自己、自己っていうけど人はやがてみんな死ぬんだよ」。本井さんは少し前に奥方を亡くされていたのだった。死生観を踏まえての俳句の独自性を彼は「虚子」の中に見出した。平明で秋草という季節の本意もまことに生かされている。妻は泉下に入り犬は老い秋はまた巡ってきた。俳句の身の丈に合った述懐であることはよくわかる。この句はこれでいい、しかしと僕は言いたいのだが。『八月』(2009)所収。(今井 聖)