句集「おりいぶ」 飴山實
五年程前に読んで見たもののあまりの読み辛さに耐えきれず投げ出した句集。
多少の鑑賞力はついたかと思い図書館から取り寄せてみたものの、やはり手強すぎて手に余る句集である。
その中でかろうじて近づけたかなと思う句を記す。
雪解けの渚をわたる海女の葬
牛売りの牛撫でて待つ腕に雪
機関車の蒸気ゆたかに霜の駅
汽車の胴霧抜けくれば滴りぬ
雪晴れの胴ふるわせて糞尿車
月明の厨の屑を雪に捨て
妻の座は厨に近し冬の月
寒流や能登は北から灯りだす
夜の底の挽き臼ひびく十二月
作者の後記に興味深い文がある。
終戦で、抑圧されていた自由が奔出したとき、沢山の先輩も校長排斥などのアジテーションに集まってきた。その中に復員服に兵隊靴の一人だけが、誰も寄りつかなくなった寮の図書室へ来て眼鏡の奥から冷たい眼で書物を物色し頁をめくっていた。それが沢木欣一であった。