句集「少長集」 飴山實

この句集以後の句は表記も旧仮名遣いとなり心地よい句が並ぶ。
たとえば、

   落葉するおとにさめゐるまぶたかな

ほんとかいなと思うものの、詩的感覚に魅了させられる。
「おりいぶ」の

   たしかな音で眠れぬ夜明けを来る牛乳屋
   ビルの空にグラマン地階に剃刃研ぐ
   冬の滝脇のラヂオに笑い声

等から
   橙の灯いろしぼれり牡蠣の上
   柚子風呂に妻をりて音小止みなし
   婚礼の透けてゆくなり桑畑

等への変貌は誠に興味深い。