寒明や濠に影なす隅櫓    忽布
  鴬張り鳴らして子らの余寒顔 ゆうこ

  春日さす二条御殿のむくり屋根 哲半

  二の丸の池に皺なす薄氷    佳子
  日当たりてゆるりほどけり薄氷 万里子

  石垣に浸み入る風の寒さかな 秋麦
  霜柱芝の細根を押し上ぐる  悦枝

  春コート脱ぐや祝ひの末席に 徒歩

  猪鍋や余呉湖眺めて舌焦がす 惠光  
  障子戸の板の隙間を春日差  英武


京都句会河原地主宰選

  日の当たる冬木に寄りて喪の家族 俊雄
  久女の忌合はせ鏡の奥の顔    万里子 
  縄掛けの地酒ぶら下げ厄落とし  忽布
  脈探るナースの指や草城忌    徒歩  
特 春寒や音叉を叩く調律師     忽布