京都句会での主宰の選が届きました。
河原地英武選
吟行句
襖絵の金箔くもる涅槃西風 俊雄
軍扇の鈍き金色春の闇 哲半
猿侯の腕を伸ばせる朧月 徒歩
春光の寺等伯の猿遊ぶ 悦枝
持寄り句
春遅々と産毛の光る枝の先 哲半
早春やけぶり幽けき香時計 佳子
春日差す瓦に金のゑびす様 哲半
冴え返る菓子屋の床に刀傷 英子
盆梅や旅信を書くによき座椅子 徒歩
生みたての卵艶めく芽吹きどき 俊雄
特 草萌や乳飲子へ胸ひらきをり 俊雄
【選評】 インパクトがありました。生命賛歌の句ですね。下五「ひらきたる」でどうでしょう。
「乳飲子」の句は私も特選で頂きました。
吟行で南禅寺の三門を見上げ、三島由紀夫の『金閣寺』の一場面を思い出したのです。
(天授庵の座敷で若い女性が着物の胸を開き青年士官の持つ茶碗に母乳を注ぐ)ところを主人公が三門の上から眺める、という場面です。
そんなこともありこの句に出会い驚きました。
三島由紀の微妙な美的感覚とは無縁の、この句の溢れるような健康美に惹かれました。