夷講の巻

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この本を借りてきたのは3回目ですが、ようやく面白さが分かりかけてきました。
と言っても、300頁のうち40頁ほど読んだだけですが。
著者の深読みの解説が面白いです。

夷講の巻(『炭俵』)

初折表
    
    神無月廿日、ふか川にて即興
 冬 振売の雁あはれ也ゑびす講    芭蕉
 冬  降てはやすみ時雨する軒    野坡
 雑 番匠が椴の小節を引かねて    孤屋
 月  片はげ山に月をみるかな    利牛
 秋 好物の餅を絶やさぬあきの風   野坡
 秋  割木の安き国の露霜      芭蕉

初折裏
 雑 網の者近づき舟に声かけて    利牛
 雑  星さへ見えず二十八日     孤屋
 雑 ひだるきは殊軍の大事也     芭蕉
 冬  淡気の雪に雑談もせぬ     野坡
 雑 明しらむ籠挑灯を吹消して    孤屋
 雑  肩-癖にはる湯屋の膏薬     利牛
 雑 上をきの干葉刻もうはの空    野坡
 雑  馬に出ぬ日は内で恋する    芭蕉
 雑 絈買の七つさがりを音づれて   利牛
 雑  塀に門ある五十石取      孤屋
花月 此嶋の餓鬼も手を摺月と花    芭蕉
 春  砂に暖のうつる青草      野坡


名残折表
 春 新畠の糞もおちつく雪の上    孤屋
 雑  吹とられたる笠とりに行    利牛
 雑 川越の帯しの水をあぶながり   野坡
 雑  平地の寺のうすき藪垣     芭蕉
 雑 干物を日向の方へいざらせて   利牛
 雑  塩出す鴨の苞ほどくなり    孤屋
 雑 算用に浮世を立る京ずまひ    芭蕉
 雑  又沙汰なしにむすめ産     野坡
 冬 とたくたと大晦日も四つのかね  孤屋
 雑  無筆のこのむ状の跡さき    利牛
 雑 中よくて傍輩合の借いらゐ    野坡
 月  壁をたたきて寝せぬ夕月    芭蕉

名残折裏
 秋 風やみて秋の鴎の尻さがり    利牛
 秋  鯉の鳴子の網をひかゆる    孤屋
 雑 ちらはらと米の揚場の行戻り   芭蕉
 雑  目黒まいりのつれのねちみやく 野坡
 花 どこもかも花の三月中時分    孤屋
 春  輪炭のちりをはらふ春風    利牛