23年自選15句

   婿殿の御慶の後の寡黙なる
   学舎は坂の上なり三十三才
   永き日や本の栞に箸袋
   理髪師の泣く子をあやす石鹸玉
   夏来る鋏三丁研ぎ上げて
   肩で押し背中で押して山車揺らす
   裸婦像の影しなやかに梅雨の夜
   切株に葉擦れの影や風涼し
   法螺貝の止んで定まる今日の月
   明け初むる田毎の露や佐久平
   細波の光移ろふ夕紅葉
   真つ青に晴れて鎌倉冬に入る
   富士の水溢るる社返り花
   亡き犬の鎖残れる冬日かな
   初雪や路上ライブのハーモニー