伊吹嶺20周年記念賞応募作品
 大師道
            松井徒歩

  東風吹くや縁はたはたと遍路地図
  産廃の土鉄木屑竹の秋
  キャタピラの踏み跡深し春の土
  春しぐれ小畔に烏ついばみて
  鳥雲に堤の長き大師道
  さへづりや丁石脇の一片食
  飯粒の零るる先の犬ふぐり
  開帳や厨子より伸ぶる縁紐
  皺深きお庫裏の朱印うららけし
  地蔵にも泉布欠かさず花菜風
  丁石を辿る路地裏猫の恋
  迷ひたる辻の仕舞屋花ゆすら
  寄り道の夜哭き石とや雀の子
  立ち並ぶ卍の幟桜東風
  御朱印を背に認め花衣
  花浴びて一本足せるお線香
  人去つて人のまた来る桜かな
  縁側にみな尻揃へあたたかし
  永き日や梵字に焔立つ護摩
  弘法の一本道やかぎろへる

前々回、前回、と続き「雉」主宰の田島先生、河原地主宰には高評価を頂き感謝に堪えません。